家の浸水対策15選|万が一のときに水の侵入を防ぐ方法

近年、線状降水帯やゲリラ豪雨による浸水被害が全国各地で発生しています。特に川の近くや低地に住んでいる方は、「自宅も浸水するのではないか」と不安に感じる場面も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、自宅で実践できる15の浸水対策をわかりやすく紹介します。
有事の際に水の侵入を防ぐ方法から、事前にできる備え、家を建てる段階で検討できる対策まで幅広く解説するので、浸水被害について不安がある方は、ぜひ参考にしてください。
家の浸水対策が必要な理由
近年は、線状降水帯(※1)やゲリラ豪雨(※2)による浸水被害が全国各地で発生し、川の近くや低地に住んでいなくても安心できない状況です。
これらの豪雨災害によって床下浸水や床上浸水が発生すると、家の基礎や壁材の劣化・家財の損失など、生活への影響が非常に大きく、修復にも多大な時間と費用がかかります。
だからこそ、事前の浸水対策が欠かせません。
※1…線状降水帯:積乱雲が同じ場所に繰り返し発生し、長時間強い雨を降らせる現象。2020年7月の九州豪雨もその一例。
※2…ゲリラ豪雨:局地的かつ短時間に猛烈な雨を降らせる現象。都市部でも突然発生し、排水機能を超えて浸水を引き起こす。
床下浸水と床上浸水の違い
浸水被害は、大きく「床下浸水」と「床上浸水」の2種類に分けられます。
被害の程度や生活への影響が大きく変わるため、それぞれの違いを理解しておくことが大切です。
- 床下浸水:建物の基礎や床下部分が水に浸かる状態。建物の基礎や断熱材、配管設備が影響を受け、放置するとカビや腐食の原因になる。
- 床上浸水:生活空間にまで水が入り込む状態。家具・家電・壁・床などが被害を受け、長期的な避難や大規模な修繕が必要になるケースも多い。生活再建に大きな支障が出る。
浸水被害に遭うとどうなる?
一度家が浸水すると生活への影響は想像以上に大きく、修復にも時間と費用がかかります。被害の代表例を3つに分けて見てみましょう。
浸水被害が及ぼす影響 | 詳細 |
①建物への物理的な損傷 | 床や壁が水を吸って腐食や変形を起こし、断熱材や基礎部分も劣化。
壁紙や床材は張り替えが必要になることが多く、建物そのものの耐久性が落ちる危険もある。 |
②電気・ガス・水道などライフラインの障害 | 浸水で配線や配管が故障すると、電気が使えない、ガスが止まる、水が濁るなどのトラブルにつながる。
復旧には専門業者による点検や修理が必要で、長期間日常生活に支障が出るケースがある。 |
③家具・家電・生活用品の損傷 | 床上浸水では、冷蔵庫や洗濯機などの家電、タンスやソファなどの家具が浸水して使えなくなる。
思い出の品や大切な書類なども紛失してしまう恐れがある。 |
こうした被害の大きさを考えると、浸水対策は「あると安心」ではなく「暮らしを守るために欠かせない準備」といえます。
家でできる浸水対策4つ!有事の際に水の侵入を防ぐ方法は?
浸水被害は突然起こるため、「いざというとき」に自宅でできる対策を知っておくことが重要です。
ここでは、家庭でも取り入れやすい浸水対策として、以下4つを紹介します。
- 土のうや水のうを設置する
- 水のうと段ボールなどで簡易止水板を設置する
- レジャーシートを活用した防水壁を作る
- 避難前はトイレや床下収納からの浸水対策も忘れずに
それぞれの対策について、詳しく見ていきましょう。
土のうや水のうを設置する
家庭でできる最も基本的な浸水対策が「土のう」の設置です。
土のうとは、袋に土や砂を詰めて積み上げることで水の流れをせき止める資材のこと。
玄関や勝手口、車庫の入り口など、水が入り込みやすい場所に並べると、一時的に浸水を防ぐことができます。
ただし、家庭で大量の土のうを準備するのは難しいケースが多いです。
地域によっては「土のうステーション」と呼ばれる配布拠点が設けられているので、事前に確認し、有事の際にすぐに取りに行けるようにしておきましょう。
なお、土のうが手に入らない場合は、代わりに「水のう」を使うのも効果的です。水のうはポリ袋に水を入れて口をしっかり縛ればすぐに作れるので、普段から大きめのゴミ袋などを常備しておくとよいでしょう。
水のうと段ボールなどで簡易止水板を設置する
水のうと板を組み合わせた簡易止水板も浸水防止に有効です。
玄関や勝手口などの出入口を長めの板でふさぎ、その板を水のうで押さえることで、水の流れを軽減できます。
さらに、段ボール箱に水のうを入れて並べるだけでも止水効果があり、手軽に応急対策が可能です。
自治体によっては止水板を貸し出しているところもあるため、普段から確認しておくと安心でしょう。
レジャーシートを活用した防水壁を作る
レジャーシートにプランターやポリタンクを組み合わせて、即席の防水壁を作る方法も有効です。
作り方は簡単で、水を入れたポリタンクや土を入れたプランターをレジャーシートでしっかり包み、入口の前にすき間なく並べるだけです。
簡単な材料でできるため、すぐに避難が必要な状況でも準備しやすいでしょう。
避難前はトイレや床下収納からの浸水対策も忘れずに
豪雨で下水の水位が上がると、トイレや浴室、洗濯機の排水口から水が逆流することがあります。
そのため、避難前にはビニール袋に水を入れた「水のう」を置いてふた代わりにし、逆流を防ぎましょう。
また、床下収納も浸水時には水の侵入口になりやすい場所です。ふたの上に重い物や水のうを置いて固定しておけば、水が室内に流れ込むのを軽減できます。
【浸水被害に備える】事前にできる4つの浸水対策
浸水は、発生してからでは十分な対策ができません。被害を少しでも軽減するには、普段からの備えが重要です。
ここでは、事前に実践しておきたい対策として、以下4つを紹介します。
- 排水路に溜まった落ち葉やごみを取り除く
- 雨水貯留槽を設置する
- 壁・屋根のひび割れや雨戸の隙間がないか確認する
- 防災グッズを準備し、貴重品をまとめておく
それぞれの対策について、詳しく見ていきましょう。
排水路に溜まった落ち葉やごみを取り除く
落ち葉やごみが排水路や側溝に溜まると、水はけが悪くなり、浸水リスクが高まります。
日ごろから自宅周辺の排水口や側溝を確認し、定期的に掃除をしておくことが大切です。
特に台風や大雨の予報が出たときは、事前に取り除いておきましょう。
雨水貯留槽を設置する
「雨水貯留槽(あまみずちょりゅうそう)」とは、降った雨水を一時的に貯めて、ゆっくり排水するタンクのことです。
通常なら一気に下水へ流れる雨水をタンクで受け止めるので、排水路や側溝への負担を軽減できます。
貯めた水は時間をかけて流すほか、庭木の水やりやトイレの洗浄水として再利用できるタイプもあります。
敷地にスペースがあれば比較的導入しやすく、浸水リスクを減らすと同時に生活用水の確保にも役立つのが特徴です。
壁・屋根のひび割れや雨戸の隙間がないか確認する
家の外壁や屋根にひび割れがあると、そこから雨水が浸入しやすくなり、室内の浸水や建物の劣化につながります。瓦やトタンのずれ・はがれも大雨の際には危険です。
また、雨戸や窓枠にがたつきや隙間があると、強風時に雨水が吹き込み、床や壁を濡らしてしまう原因になります。定期的にチェックし、必要に応じて補修しておきましょう。
なお、こうした点検は台風や豪雨のシーズン前に行うのが効果的です。小さなひびや隙間でも早めに対応しておくことで、大きな被害を防ぐことにつながります。
防災グッズを準備し、貴重品をまとめておく
いざ避難が必要になったときに困らないよう、防災グッズをしっかりと準備しておきましょう。
飲料水や非常食、懐中電灯、モバイルバッテリー、常備薬などの必需品に加え、通帳・印鑑・保険証といった貴重品もひとまとめにしておくと安心です。
さらに、自宅周辺のハザードマップを確認し、浸水想定区域や避難所の場所を事前に把握しておきましょう。実際に避難経路を歩いて確認しておけば、緊急時でも落ち着いて行動できます。
家を建てるときにできる浸水対策5選
これから家を建てる、あるいはリフォームを予定している場合には、設計段階から浸水を想定した対策を取り入れることができます。
ここでは代表的な対策として、以下5つの方法を紹介します。
- 嵩上げ(盛土)をする
- 高床構造を採用する
- 防水壁で家を囲む
- 建物を防水化する
- 設備の防水性・耐水性を高めておく
それぞれの方法について、詳しく見ていきましょう。
嵩上げ(盛土)をする
「嵩上げ(かさあげ)」は、敷地そのものを盛土によって高くすることで、浸水リスクを下げる方法です。1階部分の基礎や床の位置を周囲より高く設計できれば、水が流れ込みにくくなります。
ただし、盛土工事はコストがかかり、地域によっては高さの制限や申請が必要になる場合もあります。導入を検討する際は、費用や条件を含めて総合的に判断することが大切です。
高床構造を採用する
建物を地面から少し浮かせて建てる「高床構造」も、浸水対策として有効です。基礎部分を高くすることで、想定される水位よりも床を上に配置でき、居住空間を守りやすくなります。
なかでも「ピロティ構造」と呼ばれる設計では、1階部分を柱だけで支える吹き抜け空間とし、住居スペースを2階以上に配置します。駐車場や物置として利用できる利便性もあり、浸水対策として有効です。
ただし、これらの構造は地震や強風など横からの力に弱くなる傾向があるため、耐震補強をしっかり行うことが前提となります。コスト面や地域の規制も考慮したうえで、専門家と相談して導入を検討すると安心です。
防水壁で家を囲む
住宅の敷地を囲むように防水性の壁を設けると、外からの水が入りにくくなります。一般家庭ではまだ珍しい対策ですが、洪水リスクの高い地域では注目されつつある方法です。
特に、道路よりも低い位置に玄関や駐車場がある家では効果的で、こうした立地では建物そのものを改修するより、外周で水をせき止めるほうが現実的といえます。
建物を防水化する
家そのものを水に強くしておく方法も有効です。
たとえば、外壁や基礎に防水材を使うと、壁や床から水が入りにくくなります。玄関や勝手口には止水板を取り付けて、ドアからの浸水を防ぐのも効果的です。
また、木造住宅のように軽い建物は、大きな水の力で浮き上がってしまうこともあります。そのため、建物と基礎をしっかり固定する工事をしておくことが大切です。
新築やリフォームのタイミングで取り入れやすい方法なので、将来の安心を考えて検討してみるとよいでしょう。
設備の防水性・耐水性を高めておく
家の中で使うライフライン設備(電気の分電盤・給湯器・エアコンの室外機など)は、水に弱い部分です。
水に浸かると停電や故障で生活ができなくなる恐れがあるため、できるだけ高い位置に設置しましょう。分電盤を2階に設置したり、給湯器や室外機を台の上に載せたりするだけでも効果があります。
さらに、防水性の高いドアや窓サッシを採用しておくのも有効です。最近の玄関ドアは壁との隙間をなくして水が入り込みにくい構造になっており、窓も強い水圧に耐えるガラスや密閉性の高いタイプがあります。
こうした工夫を組み合わせることで、万が一の水害でも生活のダメージを最小限に抑えることができるでしょう。
浸水対策必須!水害が起きやすい場所とは
浸水のリスクは、地域や地形によって大きく変わります。自分の住む場所がどんな特徴を持っているのかを知っておくことが、防災の第一歩です。
水害が起きやすい場所として、以下のような所が挙げられます。
- 海・川や用水路の近く:大雨で水位が上がりやすく、氾濫や逆流による浸水の危険が高い
- 海抜が低いエリア:高潮や津波の影響を受けやすく、海水が流れ込みやすい
- 埋立地や低地:周囲より地面が低いため、雨水がたまりやすく排水が間に合わない
- 過去に水害履歴がある地域:同じ場所で繰り返し浸水するケースが多く、再発リスクが高い
こうした場所に住んでいる場合は、特に早めの避難や、日常的な対策が欠かせません。
なお、国土交通省では各地域ごとに水害が起きやすいエリアをハザードマップで公開しています。自宅周辺の水害リスクを事前に把握しておき、適切な対策を講じておきましょう。
まとめ|浸水対策でお悩みならHANAREにご相談を
浸水対策は「水が来てから」では手遅れです。日ごろの点検や準備、そして家を建てる際の工夫によって被害を大きく減らすことができます。
自宅の立地や環境に合った対策を選び、家族が安心して暮らせる環境を整えましょう。
浸水対策に関して専門的なアドバイスが必要な方は、HANAREにご相談ください。住まいに合わせた最適な対策をご提案します。