2025.09.17

スイスの核シェルター事情|普及率が高い理由や日本で核に備える方法を解説

核シェルター
スイスの核シェルター事情|普及率が高い理由や日本で核に備える方法を解説

国際情勢が不安定さを増し、核攻撃のリスクが現実味を帯びる中、日本でも核シェルターの必要性が議論されています。

そうしたなかで、世界トップクラスの核シェルター普及率を誇るスイスの事例は、非常に参考になるはずです。

スイスは国レベルで核シェルターの普及に取り組み、人口カバー率は100%を超えています。

なぜスイスはこれほどまでに整備が進んでいるのか、そして日本はどのようにして核リスクに備えるべきなのか。

この記事では、スイスの核シェルター事情と普及率の理由、日本の現状とその課題、そして個人でできる備えについてわかりやすく解説します。

スイスの核シェルター事情

スイスは、世界でもっとも核シェルターが普及している国として知られています。その背景には、中立国として歩んできたスイスの歴史が大きく関係しています。

ここでは、スイスで核シェルターがどのように整備され普及したのか、その経緯と現状について、詳しく見ていきましょう。

スイスの核シェルター普及率は100%

100%

スイスの核シェルター普及率は100%です。

これは、スイスの総人口904万人(2024年時点)のほぼすべてを収容できる規模であり、世界的にみても非常に高い水準となっています。

実際、2006年時点でスイス国内には約30万基の核シェルターが設置されているというデータもあり、シェルターの設置場所も戸建てやアパート、病院、学校、そして商業施設などさまざまです。

また、都市部だけでなく地方の小さな村まで広く分布しているのも大きな特徴で、国全体で非常時に備える体制が整っています。

スイスでは核シェルター設置が義務付けられていた

義務

スイスで核シェルターがここまで普及した背景には、法律によってシェルター設置が義務付けられていたことが挙げられます。

実際、スイスでは1963年から2011年までの約半世紀にわたり、新築される住宅や公共建築物には、必ず核シェルターを設けるよう法律で定められていました。

また、核シェルターを設置しない場合は自治体に税金を納める必要があり、なおかつ公共核シェルターに居住人数分の避難スペース確保が義務付けられたのです。

こうした経緯の背景には、米ソ冷戦下でヨーロッパ全体が核戦争の脅威にさらされていた情勢があります。

永世中立国として「他国間の戦争に積極的に関与しない」という立場であったスイスは、同盟国の軍事力に頼るのではなく「自国民は自国で守る」という国防思想を徹底していました。

その理念を強く反映させた政策が、核シェルター設置の義務化だったのです。

スイスの核シェルターには課題もある

課題

世界一の普及率を誇るスイスの核シェルターですが、いくつかの課題も指摘されています。

代表的なのは、シェルターの老朽化と維持管理の難しさです。

スイスにある核シェルターは1960年〜1970年代に建設されたものが多く、ほとんどが築50年を超える古い施設です。

しかも、冷戦が終結してから実際にシェルターが使われることはなかったため、定期的な点検や修繕が十分に行われず、そのまま放置されているケースも少なくありません。

なかには、「稼働させてみなければ本当に使えるのかわからない」という状態の核シェルターも存在するのです。

こうした現状からスイスでは現在、各地でシェルターの修理・改修が行われていますが、年単位で時間がかかる場合もあり、いざというときに十分に機能しない可能性も否定できません。

このように、核シェルターの普及率トップと言われるスイスであっても多くの課題を抱えているのです。

スイスにある世界最大規模の核シェルター「ゾンエンベルグ」

地下埋没型の核シェルター

スイスのルツェルン近郊にある「ゾンエンベルグ」は、世界最大級の核シェルターとして知られています。

山の内部を掘削して作られたこの施設は、全長1,550メートルのトンネルが南北に2本並んでいるのが特徴で、それぞれのトンネルに約1万人、計2万人収容することを想定して作られました。

トンネルの両側には7層の横断管理棟があり、居住スペースだけでなく、発電設備や医療施設、調理場、換気システム、さらには刑務所まで完備されています。

まさに「地下の要塞」といえる存在であり、長期間の避難生活に耐えられるように設計されています。

しかし、あまりにも巨大すぎるため、避難者の移動や物資搬送がスムーズに行えないなどの課題も浮き彫りになっています。そのため、収容人数は約2,000人にまで縮小された経緯があります。

現在では、施設の一部が観光地として一般公開され、内部を見学するツアーが観光客に人気です。

スイスに対する日本の核シェルター事情

人口に対する核シェルターの普及率が100%を超えるスイスに対し、日本の核シェルター普及率はわずか0.02%と非常に低い数値となっています。

これは、日本の人口1億2千万人に対し、実際にシェルターに収容できる人数が2.4万人程度しかない計算です。

では、なぜ日本では核シェルターの普及が進んでいないのでしょうか。ここでは、日本の核シェルター普及率が低い原因と課題を紹介します。

なぜ日本ではスイスのように核シェルターが普及しないのか

日本で核シェルターが普及しない理由としては、以下のようなことが考えられます。

  • 設置が義務ではない
  • 核攻撃に対する危機感が低い
  • 核シェルターの存在が戦争を想起させるという心理的な問題
  • 地震や津波など自然災害への備えが優先される傾向にある
  • 設置費用が高額であること
  •  狭小住宅や集合住宅が多く、十分なスペースがない

まず、スイスと日本の違いとして挙げられるのが、法制度です。スイスでは冷戦期に「国民一人に一つのシェルターを確保する」ことが法律で定められ、自治体や企業も建設を義務付けられてきました。

一方、日本では設置の義務がなく、個人や企業が自発的に導入するしかありません。

また、日本では核攻撃に対する危機感が比較的薄く、むしろ地震や津波など自然災害への対策が優先されてきました。さらに、核シェルターそのものが「戦争」を連想させるため、住民感情として抵抗感があることも普及の妨げになっていると考えられます。

そのほか、核シェルターは高額な設置費用がかかるうえ、日本特有の狭小住宅や集合住宅では十分なスペースを確保できないケースが多い点も現実的なハードルです。

以上のような要因が重なっていることで、日本の核シェルター普及率はわずか0.02%にとどまっていると考えられます。

シェルター整備について議論されているものの、いまだ検討段階

近年の国際情勢の変化に伴い、日本でも核シェルター整備の必要性が取り上げられるようになりました。

特に、昨今は北朝鮮による弾道ミサイル発射や台湾有事への懸念が高まっていることで、核攻撃が現実味を帯びています。

こうした状況を受け、日本政府は2024年3月29日に「武力攻撃を想定した避難施設(シェルター)の確保に係る基本的考え方」を公表しました。

これは、核攻撃などの緊急事態に備え、国民を安全に避難させるシェルターをどのように整備するのか、その方向性や考え方を示したものです。

しかし、実際にはどの程度整備するのか、予算をどこまで確保するのかといった具体的な議論には至っていません。

沖縄などの一部の地域では避難シェルターの整備計画が進んでいるものの、全国的な核シェルター整備については「検討段階」であり、国民が安心して避難できる体制は整っていないのが現状です。

日本で有事へ備えるなら家庭用シェルターの検討が必要

家庭用シェルター

スイスのように国家レベルで核シェルターの整備が進んでいない日本では、有事の際に国民全員を収容できる避難施設は存在しません。

そのため、「万が一のときは国が守ってくれる」と考えるのは現実的ではなく、自分や家族の命を守るためには個人レベルでの備えが必要です。

そこで注目されているのが、家庭用の核シェルターです。

近年では、国内にも家庭用の核シェルターを製造販売しているメーカーがあり、住宅の庭や地下に設置するタイプや、部屋の空きスペースに後付けする製品など、幅広いシェルターが販売されています。

以下では、そんな家庭用の核シェルターのメリットやデメリットについて、詳しく見ていきましょう。

家庭用の核シェルターのメリット

家庭用の核シェルターには、次のようなメリットがあります。

  • 有事の際にすぐ避難できる
  • 家族の安全確保できる
  • 長期間の避難生活に対応している
  • 備蓄用食料や水の保管場所としても利用可能
  • 仕事部屋や酸素カプセルとして、普段から活用できる

このように、家庭用の核シェルターは、「家族単位で避難先が確保できる」ことが最大のメリットといえます。

特に、小さな子どもや高齢者がいる家庭では、避難施設まで避難すること自体が難しいケースもあります。さらに、国が指定する避難施設は核攻撃を想定したものではないため、避難できたとしても必ずしも身を守れるわけではありません。

その点、自宅内に核シェルターがあれば、家族全員で速やかに安全な空間への避難が可能です。また、「すぐに避難できる」という環境があることで、日ごろの精神的な安心材料にもなるでしょう。

家庭用の核シェルターのデメリット

家庭用に核シェルターを導入するメリットはさまざまですが、一方で以下のような課題もあります。

  • 設置費用が数百万円から数千万円と高額
  • 定期的なメンテナンスなど維持管理コストがかかる
  • 設置スペースの確保が難しく、邪魔になる場合も

家庭用の核シェルターの設置には、少なくとも数百万円から数千万円のコストがかかります。また、いつでも避難できるように耐久性や設備を維持するには、定期的なメンテナンスも欠かせません。

さらに、日本は土地が狭い分、地下型や地上型などの広い敷地を要するシェルターを設置するのは難しいケースもあるでしょう。

そのため、家庭環境や予算に応じて導入の可否を検討することが大切です。

核シェルターに関するよくある質問

ここからは、核シェルターに関するよくある質問を紹介し、詳しく解説していきます。似たような疑問を抱えている方は、ここで解消しておきましょう。

核シェルターの値段はどれくらいですか?

核シェルターの価格は、規模や性能によって大きく異なります。

一般家庭向けの後付けタイプは数百万円から、地下にシェルターを建設するタイプでは数千万円に達することもあります。

タイプ 本体価格の費用相場 特徴
地上型 約700万〜1,500万円 庭や敷地内に設置する、物置や倉庫のようなタイプ
地下型 約2,000万〜3,000万円超 自宅の地下に埋没するタイプの本格的な核シェルター
屋内設置型 約400万〜800万円 部屋の空きスペースに設置するタイプで、狭小住宅やマンションにも設置可能
エアコン型 約150万〜300万円 放射能除去用のフィルター付きエアコンを設置するタイプ

 

また、シェルターの本体価格とは別に、設置工事費やメンテナンス費がかかる点にも注意が必要です。具体的な費用は設置場所や搬入経路によっても異なるので、必ず事前に見積もりをもらって総額を確認しましょう。

なお、核シェルターの値段に関するより詳しい情報は、こちらの記事も参考にしてください。

【関連記事】

核シェルターの値段はいくら?設置費用や本体価格の相場をタイプ別に解説

核シェルターは意味がないというのは本当ですか?

核シェルターについて調べていると「核シェルターは意味がない」という情報を見かけることがあります。

その理由は、核兵器の威力が非常に大きく、仮に直撃を受けた場合は核シェルターでも被害を防ぐことはできないことや、維持費用の高さや使用される可能性が低いことなどが挙げられます。

しかし、爆心地から一定の距離がある場合、核シェルターに避難すれば放射線や有毒ガスの侵入を防ぎ、数日間は安全に避難できます。

核シェルターに避難するかしないかでは、その後の生存率にも大きな違いが出てくるので「意味がない」とはいえません。むしろ、公共の核シェルターがない日本においては、自分や家族の命を守るうえで、非常に大きな役割を果たすでしょう。

スイスでは核シェルターの設置が義務化されていますか?

スイスでは、2011年まで新築住宅への核シェルターの設置が義務化されていました。

しかし、現在ではその法律は廃止されており、必ずしもすべての住宅に核シェルターが設置されているわけではありません。

とはいえ、現在でも法律には「国民一人がシェルターに避難する権利を持つ」と定められており、核シェルターの利用は国民の権利として保証されています。

まとめ|核シェルターの導入でお悩みならHANAREにご相談を

本記事では、スイスの核シェルター事情や日本における核シェルターの普及率、核対策の重要性について詳しく解説しました。

永世中立国のスイスでは、「自国民は自国で守る」という国防思想のもと、国家的に核シェルターの普及が進められてきました。

一方、日本での核シェルター普及率は0.02%と極めて低く、国レベルでの整備も検討段階にとどまっています。つまり、有事の際に家族を守るためには、個人での備えが欠かせないということです。

現在HANAREでは、ご家庭の環境や予算に応じた家庭用シェルター導入を提案しています。「万が一の事態に備えて核シェルターの導入を検討したい」という方は、検討段階でもかまいませんので、ぜひ一度ご相談ください。

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