避難所でペットと離れ離れ?同行避難の落とし穴と「在宅避難」という選択

「災害時、愛するペットと一緒に避難所へ行けば安心」 そう思っていませんか?実は、それは大きな誤解かもしれません。
多くの飼い主さんが「避難所でずっと一緒にいられる」と思っていますが、現実は「同じ敷地内にいられるが、居住スペースは別々」というケースがほとんどです。
この記事では、多くの人が混同しがちな「同行避難」と「同伴避難」の違いや、避難所生活でペットを襲うストレスのリスク、そして備えておくべき「命を守る防災グッズリスト」を解説します。
さらに、避難所トラブルを100%回避する「在宅避難」という選択肢についても掘り下げます。
ペットとの避難における「同行避難」と「同伴避難」の違いとは?

「同行避難」と「同伴避難」の違いを見ていきましょう。
「同行避難」とは?
同行避難とは、災害発生時に飼い主がペットと一緒に避難所まで安全に移動する行為を指します。
あくまで「避難所まで一緒に行くこと」が定義であり、同室で過ごせるわけではありません。
環境省のガイドラインでも、原則として同行避難が推奨されています。
しかし、避難所内では人とペットの居住スペースは分けられるのが一般的です。
「同伴避難」とは?
同伴避難とは、避難所内で飼い主とペットが同じ室内で一緒に過ごすことを指します。 ペットと共に生活できるため、飼い主にとっても安心感が大きい避難形態です。
しかし、アレルギーや衛生面への配慮から、同伴避難を受け入れている自治体はまだ少数です。 多くの避難所では「同行避難」での対応となる現実を認識しておきましょう。
| 避難スタイル | 定義 | 飼い主との距離 | 実施状況 |
| 同行避難 | 避難所まで一緒に移動する | 別々(屋外や別室が多い) | 原則推奨(一般的) |
| 同伴避難 | 避難所で同じ空間で過ごす | 一緒(同室など) | 非常に少ない |
避難所で実際に起こりうるペットのトラブルとリスク
避難所生活は、飼い主とペット双方にとって大きな精神的負担となるリスクがあります。
集団生活となる避難所では、普段通りの生活は送れません。
具体的にどのような問題が発生するのか、事前に把握しておく必要があります。
飼い主が感じる「肩身の狭さ」
避難所には、動物が苦手な人や重篤な猫アレルギー・犬アレルギーを持つ人もいます。
非常時で誰もがピリピリしている中、以下のようなクレームが発生しがちです。
- 「鳴き声がうるさくて眠れない」
- 「動物のニオイが気になる」
- 「毛が飛んでくる」
結果、「迷惑をかけてはいけない」と精神的に追い詰められ、安全な避難所を出て車中泊を選び、エコノミークラス症候群になってしまう飼い主さんも少なくありません。
環境変化によるペットへのストレス
冷暖房のない屋外や、知らない人の気配、他の犬猫の鳴き声が絶え間なく聞こえる環境は、ペットにとって恐怖となる場合があります。
- 食欲不振・下痢: ストレスでご飯を食べなくなる。
- 排泄の失敗: 我慢して膀胱炎になったり、粗相をしてしまう。
- 無駄吠えの悪化: 不安から吠え続け、さらに周囲の視線が厳しくなる悪循環。
最悪の場合、ストレス性の疾患で命を落とすケースもあることを覚悟しなければなりません。
感染症や脱走のリスク
多くの動物が密集する場所では、ノミ・ダニや感染症のリスクが高まります。
また、慣れない環境でのパニックにより、首輪が抜けて脱走してしまう事故も災害時には発生する場合があります。
ペットを守るために必要な事前準備と防災グッズ
いざという時に慌てないよう、ペット用の備蓄品準備やしつけを徹底しましょう。
救援物資は人間用が優先されるため、ペット用品は届かない可能性が高いです。 「自分のペットは自分で守る」という意識を持ち、最低でも5日分の備蓄が必要です。
最低限用意すべき「ペット用防災セット」リスト
避難時にすぐに持ち出せるよう、以下のアイテムを優先順位をつけて準備してください。 特に水とフードは、ライフラインの復旧遅れを想定して多めに用意します。
| 優先度 | アイテム名 | 数量・目安 | 備考 |
| 必須 | 飲料水(軟水) | 50〜60ml/kg × 7日分 | 硬水は尿路結石のリスクあり。軟水を。 |
| 必須 | フード(療法食) | 7日分以上 | 食べ慣れたものを。療法食は配給されません。 |
| 必須 | 常備薬 | 2週間分 | 持病がある場合は多めに確保。 |
| 必須 | トイレ用品 | 多めに | ペットシーツ、猫砂、新聞紙、防臭袋(重要)。 |
| 必須 | 身元証明 | 装着済み | 迷子札、鑑札、マイクロチップ。 |
| 必須 | 移動用クレート | 1個 | ハードタイプ推奨(避難所でのハウスになります)。 |
| 高 | 写真付き情報 | 1枚 | 飼い主と一緒に写った写真(迷子捜索・所有権証明用)。 |
| 高 | リード・ハーネス | 予備1本 | 避難所では絶対にノーリードにしない。 |
| 中 | 衛生用品 | 適量 | ウェットティッシュ、タオル、消臭スプレー。 |
しつけと健康管理の重要性
避難所でのトラブルを減らすために、日頃からの基本的なしつけが重要です。
「まて」や「おすわり」に加え、ケージの中で大人しく待てるようトレーニングしましょう。 また、決められた場所での排泄習慣も身につけておく必要があります。
感染症予防のため、狂犬病や混合ワクチンの接種も必ず済ませておきましょう。
自治体のペット避難ガイドラインを確認する

災害発生時のペットとの同行避難を考えるなら、まずは住んでいる自治体がどんな対策をしているかを確認することが重要です。
国が発表している「人とペットの災害対策ガイドライン」では、避難所でのペットの扱いや準備しておくべき物、必要な日頃の備えが具体的に示されています。
また、自治体ごとに策定されているマニュアルやハンドブックは実践的な備えに役立つでしょう。
【おすすめのガイドブック】
- 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」
- 埼玉県「ペット同行避難 ガイドライン」
- 長野県上田市「災害時ペット同行避難マニュアル」
これらを確認し、自治体ごとに定められた方法で避難できるようにしておくことが大切です。
避難場所と避難経路を確認しておく
有事の際、ペットを受け入れてくれる避難所は限られています。
そのため、まずはペットを受け入れてくれる避難所がどこかを、自治体の公式サイトやハザードマップで確認しておきましょう。
また、実際に避難所までペットと一緒に歩いて移動する訓練を行っておくと、避難できるまでの所要時間や危険箇所を把握できます。
途中のガラスや看板の落下など、災害時に危険になり得るポイントも事前にチェックしておくと安心です。
【避難訓練であわせてチェックしたいポイント】
- 避難所までの所要時間
- 危険な場所(ガラスの破損や看板落下など)
- ペットが通れない・通りにくい道
- 避難所での動物専用スペースやルール
- 動物が苦手な人への配慮方法
- 飼育環境の確認(ケージやリードの使用ルールなど)
さらに、普段から近隣住民と良好な関係を築いておくことも重要といえます。災害時に助け合える関係性があれば、避難がスムーズになり、安心感も得られるでしょう。
避難所のほかにも親戚や知人など、ペットを一時的に預けられる場所を探しておくと、受け入れが難しいとされた場合にも柔軟に対応できます。
ペットの身元がわかるようにしておく
災害時には、やむを得ずペットと離れ離れになる可能性もあります。そのときに備えて、身元がすぐに確認できるような対策をしておくことも大切です。
身元確認の基本となるのは、首輪と迷子札の装着です。
すぐに飼い主の情報がわかるようにしておくことで、万が一迷子になっても、保護された際に飼い主のもとへ戻る可能性が高まります。
さらに、マイクロチップの装着も有効です。環境省が指定する「AIPO(動物ID普及推進会議)」に登録しておけば、災害時でも動物病院や保護施設で読み取って、飼い主を特定できます。
健康管理を日ごろからしっかりと
災害時に安心して避難生活を送るには、平常時からの健康管理が欠かせません。
避難所や動物救護施設には多くの動物が集まるため、感染症のリスクが高まります。ワクチン接種やノミ・ダニ予防、定期健診を続けて、常にペットの健康を維持しましょう。
事前に予防を徹底しておくことで、ペット自身の健康を守れるだけでなく、周囲への感染拡大を防ぐことにもつながります。
最低限のしつけを行っておく
避難所では、飼い主とは別の場所でペットが過ごすことになるため、最低限のしつけを行っておくことも大切です。
特に「待て」「お座り」「おいで」といった基本的な指示に従えること、無駄吠えをしないこと、人や他の動物に攻撃的にならないことは、避難先でトラブルを避けるうえで重要です。
基本的なしつけができていることを受け入れの前提条件にしている避難所もあるため、日ごろからしっかりと準備しておきましょう。
ペット用の防災グッズも忘れずに
人間用の防災グッズとあわせて、ペットのための防災グッズも必ず用意しておきましょう。
具体的には、以下のようなペット用の防災グッズを用意しておくと安心です。
- フードと水(5日分以上)
- 使い慣れている食器
- キャリーバッグやケージ
- ペットシーツやトイレ用品
- 首輪・リードの予備
- ワクチン接種証明書や健康手帳
- 常用薬
これらに加え、おやつやお気に入りのおもちゃがあれば安心感を与えられます。また、ケージの補強や応急処置のためのガムテープなどがあれば、なおよいでしょう。
ペットとの同行避難の際に気を付けるべきポイント
有事の際はペットとの同行避難が基本ですが、ペットの種類や頭数によって、避難方法や注意点は異なります。
以下では、ペットとの同行避難における注意点を詳しく見ていきましょう。
小動物(うさぎ・ハムスターなど)の場合
うさぎやハムスターなどの小動物は、環境の変化にとても敏感です。
普段からキャリーバッグに慣れさせておき、避難時は必ず中に入れて移動しましょう。特に逃げやすいペットであれば、首輪やリードを装着してから入れるようにしてください。
なお、キャリーバッグは軽量で持ち運びやすいタイプがおすすめです。通気性を確保しつつ布で覆えば、周囲の視線や音を遮る効果もあり、ペットのストレス軽減につながります。
中型犬以上の大型動物を連れて避難する場合
中型犬や大型犬は体格が大きいため、避難時に人やほかのペットとトラブルを起こさないよう、リードやハーネスを確実に装着して移動します。
避難路に瓦礫やガラス片が散乱していることもあるので、肉球を守るための靴や保護用のテーピングを用意しておくと安心です。普段から散歩時に靴やハーネスに慣れておくと、いざというときスムーズに避難できます。
多頭飼いの場合
複数のペットを一度に避難させるのは大きな負担になります。家族がいる場合は、一人が一匹ずつ担当する形が理想です。
飼い主が一人しかいない場合は、キャリーバッグとリードを組み合わせて持ち運び方を工夫しましょう。家族の人数より多くのペットを飼っている場合は、近所の人に協力を仰ぐなど、必ず対策を講じてください。
避難所に行かないという選択。ペットを守る「在宅避難」
自宅が無事であれば、避難所へ行かずに自宅で生活を送る「在宅避難」も選択肢となります。
住み慣れた環境であれば、ペットのストレスを大幅に軽減できます。
周囲への気遣いも不要になり、飼い主にとっても精神的な負担が少ない避難方法です。
在宅避難のメリットとは?
在宅避難の最大のメリットは、ペットが普段に近い環境で安心して過ごせる点にあります。
他の避難者とのトラブルを回避でき、感染症のリスクも低減できるでしょう。
また、大型犬や多頭飼いの場合、避難所での受け入れが難しいため、在宅避難は特に有効です。
在宅避難を可能にするための条件
在宅避難を行うには、家屋の倒壊や浸水のリスクがないことが大前提です。
その上で、電気・ガス・水道が止まっても生活できるだけの備蓄が必要になります。
家具の転倒防止対策を行い、居住スペースの安全を確保しておくことも欠かせません。
普段は部屋として、有事は避難所にもなる「防災シェルター」
「在宅避難をしたいけれど、今の家が古いから地震が心配…」
「防災備蓄を置くスペースがない…」
そんな方にご提案したいのが、庭先に設置できる「防災シェルター」という選択肢です。
防災シェルターは、普段は趣味の部屋やリモートワークスペースとしても使える独立した空間ですが、災害時には「避難所」へと早変わりします。
- 高い耐震・断熱性能: 最新の住宅基準で作られているため、母屋よりも安全な場合があります。
- ペット専用スペース: 避難所のようにケージに閉じ込める必要がなく、自由に動き回れる空間を確保できます。
- 備蓄倉庫として: ペット用品や水など、かさばる防災グッズを日常的にストックしておけます。
「避難所の体育館で、愛犬が怯えながら何日も過ごす姿」を想像してみてください。
もし敷地に余裕があるなら、家族とペットのプライバシーと安全を完全に守れる場所を、自宅の敷地内に持っておく。
これこそが、”究極のペット防災”と言えるのではないでしょうか。
避難所での過ごし方
避難所では多くの人と生活を共にするため、ペットの管理は責任をもって行わなければなりません。
特に鳴き声や抜け毛、排泄物の処理を徹底し、周囲に迷惑をかけないよう配慮しましょう。
また、動物アレルギーや動物が苦手な人もいるので、ケージに布をかけるなどの工夫も大切です。
避難生活はペットにとって強いストレスになります。お気に入りの毛布やおもちゃを持ち込み、安心できる環境を整えてあげましょう。
もしも同行避難が難しいときは?代替手段を考えておこう
有事の際は、ペットと同じ避難所に避難するのが理想ですが、なかには受け入れ体制がない避難所も多くあります。
ここでは、ペットとの同行避難が難しいときの対策として以下2つを紹介します。
- 親族や知人に一時的に預ける
- ペットシェルターなどの一時預かりを活用する
それぞれの方法について、詳しく見ていきましょう。
親族や知人に一時的に預ける
最寄りの避難先がペットを受け入れていない場合、あらかじめペットを預かってくれる親族や知人を探しておくと安心です。
いざというときに預けられる場所があるだけで、迷わず避難行動をとれるようになります。
ただし、有事の際にペットを預けに行く余裕がない場合も想定されます。そのため、避難先に一時的な同行避難が可能かどうかなどを確認しておくとよいでしょう。
ペットシェルターなどの一時預かりを活用する
自治体や民間団体が運営するペットシェルターでは、一時的に動物を預かってくれる体制が整っている場合があります。
事前に利用できる施設を調べておけば、緊急時でも慌てずに対応できるでしょう。
ペットとの避難に関するよくある質問
ここからは、ペットとの避難に関するよくある質問をピックアップして回答します。似たような疑問をお持ちの方は、ぜひここで解消しておきましょう。
ペットと一緒に避難するのは迷惑ではありませんか?
正しく準備してルールを守って避難すれば、ペットと一緒でも迷惑ではありません。
ペットによるトラブルの原因には、鳴き声、毛の飛散、排泄物などがあります。こうした点を日ごろから対策しておけば、避難所でのトラブルを防げます。
例えば、キャリーやケージに慣れさせる、基本的なしつけをしておくなどの対策が大切です。
近所でペットと避難できる避難所を探したいです
ペットの受け入れは避難所によって基準が異なるため、事前の確認が欠かせません。
自治体の公式サイトや防災課に問い合わせて、どの避難所が対応しているのかを把握しておきましょう。
なお、全国のペット避難所を検索できる「うちトコ動物避難所マップ」のようなサイトも便利です。こうした情報を平常時から調べておくことで、災害時に慌てずペットと一緒に避難できます。
まとめ|ペットの命を守れるのは、日ごろの備えだけ
災害はいつ起きるかわかりません。だからこそ、ペットと安全に避難するには、平常時からの準備が何より大切です。
ガイドラインの確認や防災グッズの用意、しつけや健康管理など、少しずつ整えておくことで、いざというときに落ち着いて行動できます。
大切な家族を守れるのは、飼い主であるあなたの備えです。今日からできることを一つずつ始めていきましょう。
お困りごとがあれば、ぜひHANAREにご相談ください。




