2025.08.26

核シェルターに求められる構造|必要なスペースや設備についても解説

核シェルター
核シェルターに求められる構造

「いつ起こるかわからない核災害や放射線の脅威から、身を守れる場所を備えておきたい」

そんな思いから、近年は「核シェルター」の導入を検討する方が増えています。

核災害といえば、核爆発による爆風や熱線はもちろん、その後長期にわたり広がる放射線被害も深刻です。

数日から数週間にわたり外に出られない状況を想定すると、シェルターが果たす役割は非常に大きいといえます。

とはいえ、核シェルターの構造や設備について詳しく知る機会はほとんどなく、実際に「どんな仕組みで守られるのか」「どう選べばよいのか」を理解している人は多くありません。

本記事では、核災害に備えるために必要なシェルターの構造やスペース、身を守るために欠かせない設備についてわかりやすく解説します。

さらに、間取りの例や日本特有の課題も紹介するので、導入を検討している方はぜひ参考にしてください。

核シェルターに求められる構造

避難所としても活用できる核シェルター

核シェルターは、普通の建物では防げない「爆風」「熱」「放射線」などから人を守るための特別な施設です。

そのため、核シェルターには一般住宅とはまったく異なる以下のような構造が求められます。

▼核シェルターに求められる構造とその理由

構造 詳細
①地下に建設する シェルターは地下にあるのが基本です。

地上では核爆発の爆風をまともに受けてしまいますが、地下ではその衝撃を大きく抑えられるためです。

また、土に囲まれることで放射線を減らす効果も得られます。

②分厚い鉄筋コンクリート 核シェルターの壁や天井には、厚さ30cm以上の鉄筋コンクリートが推奨されています。これは爆風や崩落の衝撃に耐えるだけでなく、火災による高熱にも強いためです。

また、コンクリートは水分を多く含むため、人体に影響の大きい中性子線をはじめとする放射線を弱める効果もあります。

なお、ミサイル防御・防衛のために必要なコンクリートの厚さは100〜150cmです。

③外殻は土に接する 土もコンクリートと同じく水分を含んでいるため、放射線を減らす効果が得られます。コンクリートとあわせて、二重の防護壁です。
④高い気密性を確保する 放射性物質や有害ガスが入り込まないよう、シェルターは内部をしっかり密閉した構造にする必要があります。
⑤上部の建築物を頑丈にする 地上の建物が崩れて落下した場合でもシェルターを押し潰さないように、上部の建築物を強固に造る必要があります。

難しい場合は、シェルターの天井部分をさらに厚くして補強する方法も取られます。

⑥非常用脱出口を設ける 出入り口が瓦礫で塞がれた際に備え、必ず非常用の脱出口を確保します。

この出口は外気の取り入れ口も兼ねるため、燃料や可燃物から離れた安全な位置に設置することが重要です。

なお、核シェルターの構造を知るうえでは、シェルターに用いられる材質や実際の耐久力に関する知識も欠かせません。

詳しくは、以下の記事でも解説しているので、ぜひあわせて参考にしてください。

求められる構造は目的によっても異なる

核シェルターといっても、すべてが同じ構造というわけではありません。

代表的なのは「地下型」ですが、ほかにも地上に設置する「地上設置型」や、建物の一室を高性能の換気・浄化システムで守る「エアコン型」、室内に設置する「室内設置型」などがあります。

それぞれが想定しているリスクや利用環境が異なるため、求められるスペックや構造も変わってきます。

  • 地下型:爆風や放射線に強く、長期間の避難にも適している。

核シェルター

  • 地上設置型:施工が比較的容易で導入しやすい反面、爆風の影響を直接受けやすいため、壁や扉の強度を高める必要がある。

地上設置型の核シェルター

  • エアコン型:気密性とフィルターで外気を遮断することを重視した設計で、爆風や崩落への耐性よりも「放射性物質から逃れること」に焦点を当てている。

エアコン型シェルター

  • 室内設置型:室内に簡単に設置できるため、容易な避難が可能。ただし、耐久力は地下型や地上型には劣る

核シェルター

つまり「核兵器の爆風にも備えたいのか」「放射性物質から短期的に避難したいのか」など、目的によって最適な構造は異なるのです。

そのため、自分が何に備えたいのかを整理したうえで、どのタイプを選ぶか考えることが大切です。

なお、HANAREでは地下型・地上設置型・室内設置型などのさまざまなタイプの各シェルターを取り揃えています。

ご希望や予算に合わせて最適なシェルターを提案させていただきますので、どのタイプのシェルターがよいか迷っている方は、一度お気軽にご相談ください。

核シェルターに必要なスペース

核シェルターは単なる「部屋」ではなく、生存に必要な機能を備えた空間です。

内部を安全に保ち、長時間滞在できるようにするためには、以下のようなスペースがきちんと区切られている必要があります。

  • 進入路
  • 気密室
  • 除染室
  • シェルター個室
  • 非常用脱出口

それぞれのスペースについて、詳しく見ていきましょう。

進入路

シェルターへの入口は、爆風や瓦礫の影響を直接受けない構造であることが重要です。

多くは屈折した通路や厚い扉を備えており、外からの衝撃や放射線が一気に入り込まないよう設計されています。

また、外の炎や煙が流入するのを防ぐため、頑丈な防火扉や水密扉が設置されるケースもあります。

気密室

気密室は、外部とシェルター内部の間に設けられる「緩衝スペース(クッションゾーン)」です。

外気を取り込むときに気圧差を調整し、放射性物質や有害ガスが直接入り込まないようにする役割があります。

除染室

核シェルターには、外から持ち込んでしまう放射性物質を取り除くための除染室が設置されるのが一般的です。

除染室は、体に付着した放射性物質を洗い流し、内部の生活空間を汚染から守るための大切なスペースです。

特に長期避難を前提とするシェルターでは必須の設備といえます。

シェルター個室

シェルター個室は、実際に避難生活を送るための空間です。ベッドや収納スペースを配置できるだけの広さが確保され、家族全員が集まって安心して過ごせるように設計されます。

実際、核シェルターの普及率が100%であるスイスの規定では、収容人数にかかわらず、シェルター個室に最低8㎡の個室面積を設けることが義務付けられています。

これは「人が過ごすのに必要な最低限の広さ」として設定されており、設備スペースや人数分の追加面積がさらに加算されるのが一般的です。

非常用脱出口

万が一正面の進入路が瓦礫や火災でふさがれた場合に備え、核シェルターには非常用脱出口が設置されます。

この脱出口は外気の取り入れ口も兼ねるため、崩落物が積もりにくく、燃料や可燃物を避けた位置に設けられるのが基本です。

核シェルターに必要な設備構造

核シェルターは、ただ地下にコンクリートで作れば安心というわけではありません。

なぜなら、核爆発のあとには放射能や有害な空気が広がり、電気や水も止まることがあるからです。

そのため、シェルターの中でしばらく生活を続けられるようにする「設備」がとても大切です。

空気をきれいに取り込む仕組みや、電気・水を確保する設備、外からの火や水を防ぐ扉などがそろって、はじめて安全に過ごせる空間になります。

ここからは、シェルターに欠かせない具体的な設備を確認していきましょう。

エアロック

エアロックは、外部とシェルター内部の間に設けられるスペースです。二重扉によって内部と外部を隔て、外気が直接入り込むのを防ぎます。

出入りの際には必ず通過するため、放射性物質や有害ガスが直接内部に入り込みません。

また、施設によっては除染室と一体化しており、外から持ち込まれる放射性物質をここで落としてから内部に入る設計になっているケースもあります。

防火扉・水密扉・防塵扉

核シェルターの入口や通路には頑丈な扉が必要です。防火扉は火災の延焼を、水密扉は浸水を、防塵扉は放射性物質や有害な粉じんの侵入を防ぎます。

これらを組み合わせることで、災害時でも内部の安全を確保できるでしょう。

換気システム

核シェルターには、外気を安全に取り込む換気システムが欠かせません。

高性能フィルターで放射性物質や有害ガスを取り除きながら、常に新鮮な酸素を供給しなければ、避難中に安全に生活することができないからです。

また、換気システムに関連して、陽圧設備も不可欠です。核シェルターに避難したあとすぐに陽圧できないと、外気がシェルター内に入り込んでしまう可能性があります。

発電システム

外部の電力が途絶えた場合に備えて、シェルター内部には独立した発電設備が設けられるケースもあります。

特に、換気システムはどんなときであっても稼働し続けなければならないので、手動・自動どちらでも発電できる設備が求められるでしょう。

トイレ・シャワーなどの生活設備

長期間の避難に対応するためには、最低限の生活インフラも整える必要があります。

例えば、簡易トイレやシャワー設備、飲料水や食料を備蓄できる収納スペースなどがあるとよいでしょう。

核シェルターの間取り例

当社が取り扱うWNI社の核シェルターでは、以下のような間取りが採用されています。

▼4人用核シェルターの間取りイメージ

4人用核シェルターの間取りイメージ

階段の先に防護ドアと鉄扉があり、13.3畳の部屋があります。4人分の寝具を置いてもゆとりのある間取りです。

▼8人用核シェルターの間取りイメージ

8人用核シェルターの間取りイメージ

階段の先に防護ドアと鉄扉があり、12畳の部屋があります。8人分の寝具を置く際には配置の工夫が必要です。階段下のスペースには8人でも不便しないよう、トイレが2つ設けられています。

核シェルターの構造に関する課題

核シェルターは人命を守るための施設ですが、日本においてはその設置や構造にいくつかの課題があります。

まず大きな問題は、法的な位置づけです。日本ではシェルター専用の建築基準法が整備されていないため、多くの場合「納屋」や「倉庫」として扱われています。

その結果、本来求められるべき強度や構造に関して、明確な規格が存在しないのが現状です。

また、収容力という点でも海外と差があります。スイスのようにシェルター政策を持つ国と比べると、日本では規模が限定的で、収容できる人数も十分とはいえません。

こうした背景から、日本で核シェルターを設置する場合は、スイスのような厳格な規格を参考にしつつ、個々の家庭や施設が自主的に「どの程度の耐久性や収容力を確保するか」を考えて選ぶ必要があります。

まとめ

核シェルターは、核災害による爆風や放射線から命を守るために欠かせない備えです。

そのため「単純に地下に設置すれば良い」「コンクリートで造られていれば良い」というわけではなく、頑丈な構造や設備環境が求められます。

とはいえ、構造や設備については専門的な部分も多く、どのシェルターが適切な構造・設備を備えているのかを自分だけで判断するのは簡単ではありません。

そこでHANARE では、核シェルターの設計から導入までを一貫してサポートできる体制を整えています。

ご家庭の状況やご要望に合わせて最適なプランを提案いたしますので、「まずは少し話を聞きたい」という段階でも安心してご相談ください。

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