家庭用の地下シェルターとは?メリット・デメリットや費用を解説

地震や津波といった自然災害に加え、国際情勢の悪化など、日本を取り巻く環境は年々深刻化しています。こうした背景から注目されているのが「家庭用の地下シェルター」です。
これまで日本ではあまり馴染みがありませんでしたが、公共のシェルター整備が進んでいない現状を踏まえ「自宅で安全に避難できる地下シェルターを確保したい」と考える人も多いのではないでしょうか。
とはいえ、家庭用の地下シェルターはまだ認知度が低く「そもそもどんな設備?」「価格はどのくらい?」といった疑問を持つ方も少なくありません。
本記事では、家庭用の地下シェルターの基本から種類、メリット・デメリット、費用相場までわかりやすく解説します。
導入を検討している方は、ぜひ最後まで参考にしてください。
家庭用の地下シェルターとは?地下室との違いや注目される理由
家庭用の地下シェルターとは、災害や核攻撃などの非常事態から命を守るために設計された防護施設です。
一見地下室と似ているものの、その目的や構造は大きく異なります。
以下では、地下室と地下シェルターの違いと、近年注目が高まっている理由を詳しく見ていきましょう。
地下室と地下シェルターの違い
地下室と地下シェルターの大きな違いは、その目的にあります。
地下室は収納や趣味のためのスペースといった、日常生活のための空間です。一方で、地下シェルターは核攻撃や地震、浸水などの非常事態を想定し、人命を守るために設計されています。
また、地下室は壁や天井の厚みが一般的な建物と同じケースも少なくありません。対して地下シェルターは、地震の揺れや核攻撃の爆風といった強い衝撃に耐えなければならないため、壁や天井が厚い鉄筋コンクリートで造られており、耐久性が高められているのが特徴です。
そのほか、設備面にも大きな差があります。地下室は特別な機能を持っていない一方で、シェルターには空気ろ過装置や換気システム、堅牢な扉、非常用電源などが備わっており、長期間避難することも可能です。
家庭用の地下シェルターに注目が集まっている理由
近年、家庭用の地下シェルターに注目が集まっている背景には、大規模地震や津波、さらには国際情勢の不安定化による有事リスクの高まりがあります。福島第一原発事故をきっかけに、放射線汚染のリスクが広く認識されたことも要因といえるでしょう。
また、従来の地下シェルターといえば自治体や企業向けの大規模施設が中心でしたが、最近では家庭向けに導入できるモデルや省スペース設計のシェルターが増えてきたことも注目度を押し上げている要因です。
設置費用は高額なものの、さまざまなメーカーがシェルター市場へ参入したことで、有事への備えの現実的な選択肢となったことも大きいでしょう。
こうした「家庭用シェルターの普及」と「防災意識の高まり」が重なり、家庭用地下シェルターへの関心が高まっているのです。
家庭用の地下シェルターの主なタイプ
家庭用の地下シェルターといっても、核攻撃や放射能汚染を想定したもの、地震が起こった際に建物の倒壊などから命を守るもの、津波から避難できるものなど、さまざまなタイプがあります。
ここでは地下シェルターの代表的な3つのタイプを紹介するので、自分に適しているのはどのタイプかを考えながらチェックしてみてください。
核シェルター
核シェルターとは、核爆発の爆風や放射線、放射性降下物(フォールアウト)から身を守るためのシェルターです。
主に4つのタイプがあり、特徴が以下のように異なります。
核シェルターのタイプ | 特徴 |
地下埋設型 | ・地中に埋め込む方式で、最も防護性能が高い。
・爆心地から近いエリアでも生存できる可能性があり、長期間の避難生活に対応できる。 ・導入コストが最も高い。 |
地上設置型 | ・庭など、地上に設置するタイプ。
・地下工事が不要で比較的導入しやすい。 ・直接の爆風への耐久力は地下型に劣る。 |
室内設置型 | ・住宅の一室に設けるタイプ。
・小規模で、空気ろ過装置などを備えることで一定期間の避難が可能。 ・爆風や爆発への耐久力は低め。 |
簡易エアコン型(室内壁付型) | ・エアコン室外機のような装置を取り付けて、室内をシェルター化する方式。
・主に放射性物質からの防護を目的としている。 ・比較的安価で導入できるが、爆風などへの耐性はない。 |
なお、核シェルターの中で地下シェルターとされるのは、紹介した4タイプのうち「地下埋設型」のみです。
耐震シェルター
耐震シェルターは、地震による建物倒壊から命を守るための設備です。
一部屋をまるごと補強する「部屋型」、使用しているベッドに取り付けるタイプの「ベッド型」、ダイニングテーブルなどの下に耐震機能を設置する「テーブル型」などがあります。
核シェルターと比べると工期が短く、導入コストが低いものも多いため、比較的取り入れやすいシェルターといえるでしょう。
ただし、あくまでも耐震化を目的としているため、放射性物質や有害ガスなどから身を守るための設備は備えていません。
自治体によっては、耐震シェルターの導入に補助金を出しているケースもあるので、気になる方はチェックしてみるとよいでしょう。
津波シェルター
津波シェルターは、大規模な津波による被害から命を守るためのシェルターです。大きく分けて「浮かぶタイプ」と「地下に埋設するタイプ」の2つがあります。
浮かぶタイプは、屋根があり完全に密閉された「カプセル型」や、屋根がなく浮かぶだけの「ボート型」が代表的です。不沈構造によって津波が来ても沈まず、水上に浮かぶことで安全に救助を待つことができます。完全防水で酸素供給装置も備えているため、浸水する心配もありません。
地下に設置するタイプは、耐震性と防水性に優れており、内部に避難することで衝撃や浸水から身を守ることが可能です。核シェルターとしての機能を備えているものもあり、さまざまな災害に備えることができます。
家庭用の地下シェルターを設置する4つのメリット
家庭用の地下シェルターは、万が一の災害時に命を守るだけでなく、日常生活や将来の資産面でもさまざまなメリットをもたらします。
ここでは代表的なメリットとして、以下4つを紹介します。
- 自宅の敷地内で安全な場所に避難できる
- 長期間の避難生活にも対応できる
- 避難場所以外の用途としても活用できる
- 資産価値の向上につながる
それぞれのメリットについて、詳しく見ていきましょう。
自宅の敷地内で安全な場所に避難できる
家庭用地下シェルターの最大のメリットは、自宅の敷地内でスムーズな避難行動ができることです。
特に、高齢者や小さな子どもがいる家庭にとって、災害時に避難所まで移動するのは、簡単ではありません。
その点、地下シェルターがあれば、自宅の敷地内で安全を確保できるため、移動時のリスクを避けつつ安心して避難できます。
すぐに避難できる場所が近くにあるという状況は、精神的にも大きな安心感をもたらしてくれるでしょう。
長期間の避難生活にも対応できる
家庭用地下シェルターは、災害による被害が長期化した場合でも、家族全員で安全に避難生活を続けられるのも大きな魅力です。
地下シェルターの多くは、「長期間生活を続けられる空間」として設計されています。
内部には空気ろ過装置や換気システムが備わっているので、外部の放射性物質や有害ガスが侵入するのを防ぎつつ、新鮮な空気を循環させることが可能です。
食料や水を備蓄するスペースを確保しておけば、数日から数週間の避難生活も問題なく過ごせるでしょう。
さらに、非常用電源や蓄電池を設置すれば照明やラジオなどの最低限の電気機器も使用できるので、外の状況をうかがいながら救助を待つことができます。
避難場所以外の用途としても活用できる
災害時だけでなく、普段の暮らしの中でも活用できるのが家庭用シェルターの魅力です。
たとえば、テレワーク用の書斎や趣味用の部屋、食品や水を備蓄するストックルームとして利用可能です。
普段から別用途で使っておけば「非常時だけの空間」とならず、導入した価値を日常的に実感できるでしょう。
資産価値の向上につながる
シェルター付き住宅は安全性の高さから市場でも評価されやすく、資産価値が上がる傾向があります。
特に防災意識が高まっている現代では「災害に強い家」というのは大きなアピールポイントです。
将来的に売却や相続を考えるときにもプラスに働くため、長期的な投資としてのメリットも期待できます。
家庭用の地下シェルターのデメリット4つ
家庭用地下シェルターは導入することで得られる安心感が大きいものの、課題もあります。導入を検討する際は、以下のようなデメリットも理解しておくことが重要です。
- 地下シェルターの設置には十分な土地が必要
- 設置までに数ヵ月~数年の時間がかかる
- 設置費用が数百万円~数千万円と高額
それぞれのデメリットについて、詳しく見ていきましょう。
地下シェルターの設置には十分な土地が必要
シェルターは地下に大規模な構造物を建造するため、ある程度の広さが必要です。
そのため、都市部の狭小地やマンション住まいでは、設置に十分なスペースを確保するのが難しいでしょう。庭や敷地に余裕がある戸建て住宅でなければ、現実的に導入できない場合があります。
また、土地の地盤によって設置可否が分かれる点にも注意が必要です。地盤が弱い場合は地盤改良をする必要があり、逆に硬いと工事が難しくなります。
そのため、導入前には土地の調査を行うことが大切です。
設置までに数ヵ月~数年の時間がかかる
地下を掘削してシェルターを設置する工事は規模が大きく、数ヵ月から年単位の時間を要します。
さらに、自治体の建築確認や施工会社との調整も必要となるため、それなりの期間がかかることを覚悟しておきましょう。
もしも災害に備えて地下シェルターの導入を検討しているなら、早めに動き出すことが大切です。
設置費用が数百万円~数千万円と高額
家庭用の地下シェルターは大がかりな工事を必要とするほか、高性能な設備や堅牢な構造が求められることから、他のシェルターよりも設置費用が高くなりがちです。
数千万円規模の予算が必要なケースも珍しくないので、慎重に判断しましょう。
なお、最近では地下シェルターのほかにも屋内設置型やエアコン型、地上型などのさまざまなタイプが登場しています。「何に備えるか」によって適切なタイプは異なるので、自分に合ったタイプを選びましょう。
HANAREでは、地下シェルターはもちろん、屋内設置型や地上型などのシェルターも取り扱っているので、「地下シェルター以外も検討したい」という方もぜひお気軽にご相談ください。
建築基準法上の課題がある
日本の建築基準法には「地下シェルター」という明確な区分がなく、実際には建築確認申請の際に「倉庫」や「納戸」として扱われています。
さらに、シェルターを居室とみなす場合には建築基準法の規定に従う必要があり、たとえば収容人数は換気装置の性能から算出しなければなりません。
自治体ごとに基準や判断が異なるケースもあるため、事前に行政や専門家に相談しておくことが重要です。
家庭用の地下シェルターの設置にかかる費用
地下シェルターの設置にかかる費用は、数千万円に及びます。
実際にHANAREで取り扱っている地下埋設型のシェルターは、2,800万円が最低価格です。これに加え、地盤の施工やカスタマイズにより、費用は追加されていきます。
「少しでも安く購入したい」と考える方は多いですが、安すぎる地下シェルターは、安全性が欠けていたり、後々トラブルに発展したりと購入するリスクが大きいので注意が必要です。
シェルターは命を守る設備なので、削ってはいけないコストや妥協できる点をしっかり見極めましょう。
耐震シェルターなら助成金制度を利用できる可能性も
耐震シェルターとして地下シェルターを導入する場合、自治体によっては補助金や助成金が受けられるケースがあります。
これは、住宅の耐震化や防災対策を推進する取り組みの一環として行われているもので、設置費用の一部を軽減できるのが大きなメリットです。
ただし、対象となるのは「耐震目的での設置」に限られることが多く、補助金の金額や条件は地域ごとに異なります。
申請にあたっては、事前に自治体の窓口や公式サイトで制度の有無を確認することが大切です。
家庭用の地下シェルターに関するよくある質問
ここからは、家庭用の地下シェルターに関するよくある質問をピックアップして回答していきます。似たような疑問をお持ちの方は、ぜひ参考にしてください。
日本に地下シェルターはある?
日本には、核攻撃や化学兵器に耐えられる公共の地下シェルターはありません。
東京や大阪といった都市部には、緊急時の避難所に指定された地下空間が存在しますが、核対応を想定した設計ではないので注意しましょう。
なお、日本の核シェルター普及率は0.02%程度とされ、ほとんど普及していないのが現状です。近年は政府がシェルター整備を検討していますが、具体的な計画や整備には至っていません。
そのため、核被害に備えるためには、個人単位で地下シェルターを設置する必要があります。
家庭用地下シェルターは意味がないって本当?
「家庭用の地下シェルターは意味がない」と言われることがありますが、これは間違いです。
確かに「直撃には耐えられない」という意味では、地下シェルターは100%の安全を保障するものではありません。
しかし、実際には爆風や放射線、放射性降下物から命を守る効果が期待できます。完全な無傷を保証するものではないものの、「ないよりは生存率を大きく高める」役割を果たすのが地下シェルターです。
いざというとき、地下鉄はシェルターになりますか?
地下鉄は核攻撃を想定して造られていないため、核シェルターの代わりにはなりません。
爆風や放射線への耐性が不十分で、むしろ換気口などから有害物質が入り込む可能性もあります。
そのため、有事に備えるなら、専用の家庭用地下シェルターを導入する方が効果的です。
地下シェルター付の住宅はありますか?
最近では、地下シェルターを備えた住宅が販売されるケースが増えてきました。
特に富裕層を中心に需要があり、戸建ての新築と同時に導入されるほか、後から敷地内に設置する例も増えています。
家庭用地下シェルターの耐用年数はどれくらい?
家庭用地下シェルターの耐用年数は、設計・施工が適切であれば20年程度とされています。
ただし、長年にわたって機能を維持するには定期的な点検とメンテナンスが欠かせません。
いつ来てもおかしくないリスクに備えるために、信頼できるメーカーからシェルターを購入し、機能や設備を維持管理することが大切です。
まとめ|家庭用地下シェルターでお悩みならHANAREにご相談を
家庭用の地下シェルターは、自然災害や核攻撃など最悪の事態に備えるための防護手段です。高額な投資にはなりますが、家族の命を守り、資産価値を高める効果もあります。
一方で、費用や設置場所、工事の制約といった課題もあるため、専門家に相談して検討することが大切です。
「自分の家に地下シェルターを導入できるのか」「費用感を知りたい」という方は、ぜひ一度HANAREにご相談ください。お客様の状況に合わせて最適なプランをご提案します。