アメリカの核シェルター事情|普及率や日本に核シェルターがない理由を解説

「核シェルター」と聞くと、あまり縁のない話に感じる方も多いかもしれません。
実際、日本における核シェルターの普及率はわずか0.02%と低く、災害大国でありながら核災害への備えは非常に限定的です。
一方、世界的に見るとアメリカやスイスでは国民の大多数が利用できるシェルターが整備されており、核攻撃へ備える施設が生活の一部として存在しています。
本記事では、アメリカにおける核シェルターの普及状況や設置の特徴を紹介するとともに、日本に核シェルターが広がらない理由をわかりやすく解説します。核シェルターの購入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
アメリカの核シェルター事情
アメリカは、世界の中でも核シェルターの整備が進んでいる国のひとつです。
冷戦期以降、政府の推奨や国民の防災意識の高まりを背景に、学校や公共施設、個人住宅に至るまで幅広くシェルターが設置されてきました。
ここからは、アメリカにおける核シェルターの普及状況や特徴を具体的に見ていきましょう。
アメリカの核シェルター普及率は82%と世界的に高い
世界一の核保有国であるアメリカでは、核シェルターの普及率が約82%と、世界的にも非常に高い水準にあります。
その理由は主に以下のとおりです。
▼アメリカで核シェルター普及率が高い理由
- 冷戦時代の歴史的背景:ソ連との緊張が高まっていた時期、核戦争が現実的な脅威とされ、政府が積極的にシェルター整備を推奨。公共施設や学校、病院などに大量に設置された。
- 国民の防災意識の高さ:アメリカには災害や攻撃に備える「プレッパー文化」があり、個人でも備蓄やシェルター導入を進める家庭が多い。これが普及率を押し上げる要因となった。
- 民間市場の発展:Atlas Survival Shelters(アトラス・サバイバル・シェルターズ)やRising S Company(ライジングS社)、Bivos(ビボス社)などのメーカーが個人向けシェルターを提供。富裕層を中心に、長期滞在可能な高性能モデルが人気を集めた。
アメリカの核シェルターは地下型が一般的
アメリカでは、核シェルターの多くが地下に設置されています。これは、爆風や放射線からの防護効果を最大限引き出すため、厚みのある鉄筋コンクリートで地中に埋め込まれる構造が基本とされているからです。
また、特にアメリカ国内で選ばれている核シェルターは、Atlas Survival SheltersやRising S Company製のものが多い傾向があります。これらのメーカーは個人住宅向けに地下シェルターを提供しており、ベッドやキッチン、バスルームなどを備え、長期的な非難生活を快適に過ごせるモデルも展開しているのが特徴です。
避難用の道路標識も用意されている
アメリカでは、核攻撃や放射性降下物による汚染のリスクを想定し、避難場所へのルート誘導となる道路標識が設置されています。
例えば「核シェルターまで5マイル」のように、核シェルターまでの距離を示す標識が一般的に使用されているのです。
また「できるだけ速いスピードを維持せよ(MAINTAIN TOP SAFE SPEED)」といった標識が、標準の速度制限標識に追加される形で用意されています。これは、放射性汚染区域を通過する際に、最小限の被曝時間ですばやく通行するよう促す非常時仕様のサインです。
以上を踏まえると、アメリカでは日本よりも圧倒的に核攻撃への備えが進んでいるといえるでしょう。
アメリカに対する日本の核シェルター事情
アメリカの82%という高い普及率に対し、日本の核シェルター普及率はわずか0.02%に留まっており、核や放射線への備えはまだまだ一般的とはいえない状況です。
この背景にはいくつかの社会的・文化的な要因があります。以下でその要因を詳しく見ていきましょう。
日本に核シェルターが普及しない理由
日本に核シェルターが普及していない理由としては、以下のようなことが考えられます。
- 核シェルターの設置義務がない
- 核戦争を現実的な脅威と考えていない
- 土地が狭く人口密度が高いため、大規模なシェルターを設置する場所がない
- 日本の住宅の寿命が短く、シェルターにまで費用をかけられない
- 他の災害リスク(津波や山崩れ)があり、不安要素が多い
- 長期備蓄意識が薄い
まず大きな理由として、日本ではスイスやアメリカのように法律でシェルター設置を義務づけていないことが挙げられます。さらに、日本はアメリカの「核の傘」に依存してきた背景があり、核戦争を現実的な脅威として意識してこなかったという事情もあります。
また、日本特有の住宅事情も影響しているといえるでしょう。
日本は土地が狭く人口密度が高いため、住宅や公共施設にシェルターを設ける余地がほとんどありません。加えて、日本の住宅は欧米に比べて寿命が短く、建て替えを前提とすることが多いのが特徴です。そのため、「高額な費用をかけてまでシェルターを導入しない」という判断につながりやすいといえます。
さらに、日本は地震や津波といった自然災害が多いので、地下シェルターが倒壊・埋没するリスクへの懸念も拭えません。そのほか、普段から食料や物資が手に入りやすい環境にあるため、長期備蓄や核シェルターの必要性を実感しにくいという、防災意識の違いも普及の遅れを後押ししています。
こうした要因が重なり、日本では核シェルターが「現実的な防災手段」として認識されにくい状況が生み出されているのです。
シェルター整備の指針は公表されたものの、課題は多い
日本政府は2024年3月29日に、「武力攻撃を想定した避難施設(シェルター)の確保に係る 基本的考え方について」を発表し、国民保護の観点から核シェルターの整備指針を示しています。
その後、2024年~2025年にかけて複数回の会議が行われていますが、現状全国的なシェルター整備の計画はされていません。具体的な数値目標や基準はなく、普及に向けた取り組みは進んでいないのが現状です。
とはいえ、沖縄などの一部の地域では避難シェルターの整備計画が進んでいるなど、徐々に動きが出てきているのも事実です。
政府は、いわゆる「台湾有事」なども念頭に、沖縄の先島諸島の住民が一時的に身を寄せることができるよう「特定臨時避難施設」とするシェルターを石垣市など5つの市町村に新たに整備する方針で、鉄筋コンクリートの堅ろうな構造で公共施設などの地下に設けるとしています。
石垣市によりますと、これまでの調整で、シェルターの面積はおよそ6000平方メートル、収容人数はおよそ500人と想定して、市役所に隣接した土地に整備する防災公園の地下に設けるということです。 引用元:沖縄NEWS WEB|NHK |
以上を踏まえると、今後も有事に備えるために徐々に日本国内でのシェルター整備が進んでいくことが考えられるでしょう。
アメリカに対する世界の核シェルター事情
日本と比べると核シェルターの普及が進んでいるアメリカですが、世界的にみるとどうでしょうか。
ここでは、アメリカと各国における核シェルター普及率を比較してみましょう。
国名 | 普及率 | 特徴 |
スイス | 100% | 通算860万人の人々が避難可能(人口比計算114%) |
イスラエル | 100% | 新築住宅にはシェルター設置が義務付けられている |
アメリカ | 82% | 冷戦期から整備、地下型が中心 |
ロシア | 78% | 移動式シェルターの量産を開始 |
イギリス | 67% | 8000人を収容できるシェルターが地下鉄駅に点在している |
シンガポール | 54% | 新築住宅にはシェルター設置が義務付けられている |
韓国(ソウル) | 323.2% | ソウル市内に1038箇所設置されている |
日本 | 0.02% | 法的整備や補助制度が不十分 |
上記を踏まえると、アメリカは世界的に見ても核シェルターの普及率が高い国といえます。
なお、世界各国の核シェルターの普及率については、以下の記事でも詳しく解説しているので、気になる方はぜひチェックしてみてください。
核に備えるなら、個々の対策が大切
ここまで見てきたように、アメリカやスイスと比べると、日本の核シェルター普及率は極めて低い水準に留まっています。
公共の整備が期待できない以上、最終的には「自分や家族の命をどう守るか」を個々で考えておくべきです。
例えば、家庭用の核シェルターを設置しておけば、自宅にいながら避難できる場所を確保でき、有事の際にも迷わず行動できます。
また、普段から避難行動や非常用持ち出し品を確認しておくことも欠かせません。
核災害に限らずあらゆる災害への備えは「家庭単位」での対策が現実的です。
ここからは、その中でも注目されている家庭用核シェルターのメリットとデメリットについて解説します。
家庭用の核シェルターのメリット
家庭用の核シェルターの主なメリットは以下のとおりです。
- 自宅での避難が可能になる:自宅内に避難先があることで、即座に安全な場所に避難できる。
- 放射線・有害物質から身を守れる:設計によっては放射線遮断や換気フィルター完備で、外部環境に左右されず命を守れる。
- 長期避難に対応できる:ベッドや水・食料の備蓄スペースを確保すれば、数日~数週間の滞在も可能。また、防災グッズの保管場所としても適している。
- 家族が集まって安心できる空間を確保できる:核だけでなく地震や台風などの災害時にも「安全な部屋」として活用でき、家族の不安を和らげる。
核シェルターによって物理的な安全性を確保できるのはもちろん、同時に心理的な安心感も得られるのも大きなメリットといえるでしょう。
家庭用の核シェルターのデメリット
家庭用核シェルターにはさまざまなメリットがありますが、反対にデメリットがあることも忘れてはいけません。
家庭用の核シェルターの主なデメリットは以下のとおりです。
- 設置コストが高い:本体価格に加えて工事費や維持費がかかり、数百万円~数千万規模の投資になるケースもある。
- 設置場所やスペースが限られる:土地や住宅事情によっては設置が難しい場合がある。特に都市部の住宅では選択肢が限られる。
- 維持や換気システムなどの管理が必要:換気設備や非常用電源など、定期的な点検やメンテナンスを怠ると性能を発揮できない。
デメリットはあるものの、設置場所や製品のタイプを工夫すればカバーできる部分も多く、メリットと照らし合わせて慎重に検討することが大切です。
核シェルターに関するよくある質問
核シェルターについて調べていると、「アメリカと日本ではどう違うの?」「実際いくらくらいするの?」「本当に意味があるの?」といった疑問を持つ方も多いでしょう。
ここからは、よくある質問に答える形で、核シェルターに関する基本的なポイントを整理していきます。同じような疑問をお持ちの方は、ぜひここで解消しておきましょう。
アメリカと日本の核シェルターに対する考え方の違いは?
アメリカでは核攻撃を現実的な脅威として考えており、「国家防衛の一環」として核シェルターの整備が進んできた背景があります。
一方、日本では「核攻撃は想定外の事態」と考えられており、普及が遅れているのが現状です。
その結果、核シェルターの普及率はアメリカが約82%に達しているのに対し、日本はわずか0.02%と極端に低い水準に留まっています。
核シェルターの値段は?
家庭用の核シェルターの設置にかかる費用は、種類やタイプによって数百万円から数千万円まで幅があります。
以下は、HANAREで取り扱っているシェルターを参考にした費用目安です。
タイプ | 本体価格の目安 | 特徴 |
地下型シェルター | 約2,000万〜3,000万円超 | 地下に埋没するタイプ。最も耐久性が高く、長期の避難が可能な物も多い。 |
地上型シェルター | 約700万〜1,500万円 | 地上に建設するタイプ。地下型には劣るものの、鉄筋コンクリートなどの頑丈な素材で造られ、衝撃や放射能から身を守れる。 |
屋内設置型シェルター | 約400万〜800万円 | 屋内に組み立てて設置するタイプ。耐久性は劣るものの、放射線や有害ガスから身を守ることが可能。 |
エアコン型シェルター | 約150万〜300万円 | 室内の空気を安全に保つ換気システム。耐久性はないものの、核攻撃後の被爆リスクを回避できる。 |
ただし、核シェルターの設置には、上記の本体価格のほかに設置費用や維持費などのコストもかかります。搬入経路や設置場所の状況によっても費用は異なるので、必ず事前に見積もりをとることが大切です。
HANAREで取り扱っている製品について詳しく知りたい方は、こちらも参考にしてください。
「核シェルターは意味ない」は本当?
ネット上では「核シェルターを作っても意味がない」という意見は少なくありません。しかし、これは誤解を含んでいます。
確かに「核シェルターにいればどんな脅威からも身を守れる」というわけではありません。仮に、核シェルターの直上で核爆発が起きた場合、いくら核シェルターといえども100%の安全を保証することはできないでしょう。
とはいえ、核シェルターへ避難するのとしないでは、生存率に大きな違いがあるのは間違いありません。なぜなら、核攻撃後は放射線や放射性物質が飛散し、被爆という二次被害が発生するおそれがあるからです。
核シェルターにいれば、安全な空間で避難生活を送れるので、被爆リスクを極限まで抑えることができます。また、核爆発があった際も爆心地から離れていれば、爆風や衝撃から身を守ることが可能です。
以上を踏まえると、核シェルターは決して意味がないものではなく、有事の際に命を守るうえで非常に重要な役割を果たすといえるでしょう。
まとめ|核シェルターでお悩みならHANAREにご相談ください
本記事では、アメリカにおける核シェルターの普及状況や日本ですべき核対策について詳しく解説しました。
アメリカでは冷戦時代からシェルター整備が進み、国民の大多数が利用できる環境が整っています。一方、日本では普及率が0.02%と低く、国の取り組みも課題が多いのが現状です。
とはいえ、核災害のリスクがゼロではない以上、家庭や個人でできる備えは非常に重要になってきます。
HANAREでは、本格的な核シェルターを中心に幅広い製品を取り揃え、お客様の住宅環境やご予算に合わせた提案が可能です。まずは「話を聞いてみたい」という段階でも、ぜひお気軽にご相談ください。