今からできる首都直下地震への備え9選|危険から命を守るための対策を解説

30年以内に70%の確率で発生するとされている「首都直下地震」。
首都圏には人口や企業が集中しており、ひとたび大規模地震が起これば、社会・経済に甚大な影響が及ぶと想定されています。
そのため「いつ来るかわからない地震に備えたい」という方も多いのではないでしょうか。
とはいえ「発生確率が高いことは知っているが、実際に何を備えればよいのかわからない」という方も少なくないはずです。
そこで本記事では「今からできる首都直下地震への備え9選」と題して、命を守るために実践できる具体的なポイントを解説します。
大切なのは、日常の中でできる備えを一つずつ整えておくことです。避難所の把握、耐震化や家具の固定、備蓄や連絡手段の準備など、個人や家庭で取り組める対策は少なくありません。
本記事で紹介する対策を参考にして、日ごろから安心できる環境を整えていきましょう。
首都直下地震とは?
首都直下地震とは、東京の直下で発生するマグニチュード7前後の大地震のこと。
首都圏は北米プレートやフィリピン海プレート、日本の東側に広がる太平洋プレートといった3つのプレートが重なり合う複雑な構造になっており、これらのプレートが沈み込んだり、跳ね返ったりすることで地震が発生します。
特徴的なのは、東日本大震災のような長時間の横揺れではなく、縦揺れを伴う「突然の激しい揺れ」が想定される点です。
内閣府によると、実際に首都直下地震が発生した場合、以下のような被害が生じると想定されています。
区分 | 内容 | 被害規模・影響 |
地震の揺れによる被害 | 揺れによる全壊家屋/建物倒壊による死者 | 全壊:約175,000棟/死者:最大約11,000人 |
揺れによる建物被害に伴う要救助者 | 最大約72,000人 | |
市街地火災の多発と延焼 | 焼失棟数/全体の建物被害 | 焼失:約412,000棟/倒壊等と合わせ最大約610,000棟 |
死者数 | 火災による死者:最大約16,000人/倒壊等と合わせ最大約23,000人 | |
インフラ・ライフライン等の被害 | 電力 | 発災直後:地域の約5割が停電/1週間以上不安定 |
通信 | 固定電話・携帯電話とも9割の通話規制が1日以上継続/メールは遅配の可能性 | |
上下水道 | 都区部で約5割が断水/約1割で下水道使用不可 | |
交通 | 地下鉄:復旧に1週間/私鉄・在来線:復旧に1か月程度/主要道路:啓開に1〜2日、一般道は瓦礫・放置車両で深刻な交通麻痺 | |
港湾 | 非耐震岸壁は機能停止/復旧に数か月 | |
燃料 | 備蓄はあるが、タンクローリー不足・渋滞により重油・軽油・ガソリン等の供給困難 | |
経済的被害 | 建物等の直接被害 | 約47兆円 |
生産・サービス低下の被害 | 約48兆円 |
【参考】特集 首都直下地震の被害想定と対策について(最終報告)|内閣府
なお、政府の地震調査研究推進本部は首都直下地震について、2020年1月時点で「今後30年以内に70%程度の確率で発生する」と発表しており、もはや“想定外”では済まされないリスクといえます。
自宅や職場が都心にある場合、自分や家族を守るためには平時からできる備えを整えておくことが大切です。
緊急地震速報が間に合わない「突然の激しい揺れ」の可能性
首都直下地震は震源地が都心の真下に位置するため、緊急地震速報が間に合わない可能性があります。
一般的な地震では震源が遠い分、揺れを感じるまでに数秒〜十数秒の猶予があり、速報を受けて身を守る行動をとることが可能です。
しかし直下型の場合、緊急地震速報が来る前もしくは、ほぼ同じタイミングで強烈な縦揺れが直撃するケースが想定されています。
速報が間に合わない以上、唯一できるのは日常的な対策です。たとえば家具の固定や避難経路の確認、家庭での防災訓練などを徹底しておくことが重要となります。
平時の準備こそが、突然の直下地震から命を守る唯一の手段といえるでしょう。
今からできる首都直下地震への備え
首都直下地震は「30年以内に70%の確率」で発生するとされる現実的なリスクです。
そのため、自分や家族を守るためには、「いまから何を準備しておくべきか」を具体的に考えておく必要があります。
ここからは「今からできる首都直下地震への備え9選」として、避難先の確認から日常生活に取り入れられる工夫まで、具体的な対策を順番に解説します。
広域避難所を把握しておく
首都直下地震が発生した場合、まず多くの人が避難することになるのが「広域避難所」です。
広域避難所とは、大規模火災や建物倒壊の危険から住民を守るために国や自治体が指定している大きな公園や学校、運動場などの施設を指します。
東京都では各区市町村ごとに広域避難所が設定されており、地域住民がまとまって避難できるようになっています。
ただし、地震発生後に初めて「避難所はどこだろう」と探していては間に合いません。
首都直下地震では交通が麻痺し、徒歩での移動を余儀なくされるケースも想定されるため、自宅や職場の周辺にある避難所を事前に確認しておきましょう。
地図アプリや紙の地図にマークをしておき、複数の候補を把握しておくことで、混乱の中でも迅速に避難行動をとれるはずです。
木造密集地帯を確認しておく
首都直下地震に備えるためには、自宅や職場近くの木造密集地帯を確認しておくことが大切です。
首都直下地震の被害想定では、火災が大きな割合を占めており、最大でも412,000棟が焼失、16,000人の死者が出るとされています。
中でも、木造住宅が密集する「木造密集地帯(木密地域)」は道路幅が狭く、消防車が入りにくいことから、大規模火災につながる可能性が高い地域です。
そのため、避難経路に木密地域がある場合は、そこを避けて通ったり、そもそも木密地域に避難したりすることがないようにしなければなりません。
なお、木造密集地帯は東京都の「東京都不燃化ポータルサイト」で確認可能です。自宅や職場、学校などの近くの木造密集地帯をチェックして、地震があったときに近づかないように注意しましょう。
避難行動の流れをシミュレーションしておく
首都直下地震に備えるためには、避難行動の流れを具体的にシミュレーションしておくことが重要です。
避難行動というと「地震があったらここに避難する」というざっくりとした内容をイメージしている方も多いかもしれません。しかし、地震の際は火災や交通の混乱、家族の所在がわからないなど、さまざまな要因が重なります。
そのため、状況に応じた行動を具体的にシミュレーションしておくことが大切です。
たとえば、自宅で被災した場合は「火元を確認・処理してから広域避難所へ移動する」、勤務先で被災した場合は「無理に帰宅せず、職場にとどまり安全確保を優先する」、学校にいる子どもは「学校が安全なら保護者の迎えを待つ」といった具合に、ケースごとに避難行動の流れを整理しておきましょう。
さらに、「家族と連絡が取れない場合はどうするか」まで決めておけば、混乱を最小限に抑えられます。
いざというときにスムーズな行動ができるよう、いろいろなケースを想定しておきましょう。
自宅の耐震化やシェルターの設置
首都直下地震に備えるうえでは、自宅そのものの安全性を高めることが何よりも重要です。
特に、1981年以前の旧耐震基準で建てられた住宅は倒壊リスクが高いため、耐震診断を受け、必要に応じて耐震補強を行うことが欠かせません。
耐震リフォームには数百万円単位の費用がかかるケースもありますが、命を守る投資と考えるべきでしょう。
一方で、住宅全体の補強が難しい場合には「耐震シェルター」を設置するという選択肢もあります。
耐震シェルターは、コンクリートや鉄骨、強化木材で造られており、部屋や庭に設置することで建物の倒壊から身を守れるのが特徴です。
施工期間も短く、比較的低コストで導入できる点から、手軽な耐震化の手段として注目が集まっています。
家全体を補強するのが理想ですが、シェルターという最低限命を守る空間を確保しておくことが、直下型地震への現実的な備えとなるでしょう。
耐震化には補助金が出る場合もある
自宅の耐震化やシェルター設置は費用面のハードルが課題ですが、国や自治体によっては補助金制度を活用できる場合があります。
多くの自治体では旧耐震基準で建てられた住宅に対し、耐震診断や耐震補強工事の費用を一部助成しており、数十万円の補助が受けられるケースも少なくありません。
ただし、対象となる条件は自治体によって異なり、住宅の築年数や耐震診断の結果が要件になることも多いため、事前の確認が不可欠です。
詳しくは以下の記事でも紹介しているので、この機会にぜひチェックしてみてください。
家具や収納などのレイアウト見直し・転倒防止をする
強い揺れによる家具の転倒やガラスの飛散から身を守るためには、家具のレイアウトを見直すことも大切です。
具体的には、大型家具はL字金具や突っ張り棒で壁に固定し、キャスター付きの家具にはストッパーを取り付けます。
食器棚や本棚の扉には耐震ラッチを設置し、開き戸から物が飛び出さないようにする工夫も有効です。
また、ガラスには飛散防止フィルムを貼っておくと、万一割れても破片によるけがを軽減できます。
首都直下地震のような強い揺れでは、建物の倒壊だけでなく「家具の転倒やガラスの飛散」が重大な二次被害を生む可能性があります。
実際、過去の震災では家具の下敷きになったり、窓ガラスの破片でけがを負ったりする事例が数多く報告されました。
地震の際に自宅から動けなくなることがないように、家の中の対策にも注意を払いましょう。
3日分以上の備蓄をする
首都直下地震が発生すると、道路の寸断や物流の停滞により、食料や水などの支援物資がすぐには届きません。
一般的に「支援が行き渡るまでには72時間かかる」とされているため、最低でも3日分、可能であれば7日分程度の備蓄をしておくことが推奨されています。
具体的には、飲料水は1人1日3リットルを目安に準備し、保存のきくレトルト食品・缶詰・乾パンなどを揃えておきましょう。
加えて、モバイルバッテリーや懐中電灯、乾電池、携帯トイレも必需品です。特に都市部では断水や停電が長期化する可能性があるため、トイレ対策や衛生用品を備えておくことが安心につながります。
非常用持出袋を用意しておく
首都直下地震のような大規模災害では、自宅にとどまれなくなり、急いで避難しなければならないケースも少なくありません。その際に役立つのが「非常用持出袋」です。
持出袋をあらかじめ準備しておくことで、慌てずに必要な物資を持ち出し、安全に避難行動へ移ることができます。
非常用持出袋の中には、以下のようなものを入れておき、いつでも持ち出せるようにしておきましょう。
- 最低限の飲料水と非常食(1日分程度)
- 下着
- 歯磨きセット
- カイロ
- レインコート
- 懐中電灯
- モバイルバッテリー
- 携帯ラジオ
- 常備薬
- 救急セット
- 簡易トイレ
- 現金や身分証のコピー
そのほか、家族構成によっては乳児用品や高齢者用の介護用品も忘れずに入れておきましょう。
なお、持出袋には両手が自由になるリュックを選ぶのがおすすめです。玄関や寝室など、すぐ手に取れる場所に置いておきましょう。
ライフラインの断絶に備えておく
首都直下地震が発生すると、電気・水道・ガス・通信といったライフラインが停止する可能性が高いとされています。電気は数日、水道やガスは数週間にわたって使えないケースも考えられるでしょう。
そのため、ライフラインが断絶した環境でもしばらくは生活ができるように対策しておくことが大切です。
断水への備え | ・飲料水の確保
・生活用水を考慮した水の備蓄 ・お風呂に水を張っておく(お風呂に入ったあと、次に沸かすまでは水を抜かない) |
停電への備え | ・モバイルバッテリーやポータブル電源の確保
・ソーラー発電に対応した製品の用意 ・手動で使えるラジオや充電器の用意 |
ガスの停止への備え | ・カセットコンロとガスボンベの用意
・ガスがなくても食べられる食料品の確保 |
家族の連絡手段を決めておく
首都直下地震が発生すると、電話回線やインターネットが混雑し、家族や社員とすぐに連絡を取れない可能性が高くなります。そのため、平時から「非常時の連絡手段」を決めておくことが重要です。
有効な方法の一つが、災害用伝言ダイヤル(171)の活用です。固定電話や公衆電話から171に電話をかけて音声メッセージを残すと、家族がそれを再生して安否を確認できます。
LINEやSNSも補助的に活用できますが、通信が不安定になる場合があるため「まずは171に登録する」「その後にSNSで確認する」といったルールを決めておくと安心です。
連絡が取れない状況を前提にルールを共有しておくことで、混乱を防ぐことができるでしょう。
自治体の避難リーフレットを確認する
首都直下地震に備えるうえでは、各自治体が発行している避難用のリーフレットや防災ガイドブックも確認しておきましょう。
リーフレットには、避難所や広域避難場所の一覧、避難経路、災害時の行動フローなどがわかりやすくまとめられているので、地震対策の助けとなるはずです。
たとえば東京都では「東京くらし防災」や「東京防災」という冊子を配布しており、首都直下地震の被害想定や避難時の注意点、備蓄チェックリストなどが掲載されています。
普段から内容を確認し、家族や社員と共有しておくことで、いざというときもスムーズな行動が可能になるでしょう。
首都直下地震に関するよくある質問
最後に、首都直下地震に関してよく寄せられる質問を取り上げ、最新の知見や公的なデータをもとにわかりやすく解説します。似たような疑問をお持ちの方は、ぜひここで解消しておきましょう。
首都直下地震はいつ来るとされていますか?
首都直下地震は、「この日に来る」という具体的な発生日を予測することはできません。
しかし、政府の地震調査研究推進本部は2020年1月時点で「今後30年以内に70%程度の確率で発生する」と公表しており、極めて高い発生リスクが指摘されています。
これは世界でも類を見ないほど高い確率であり、もはや「来るかどうか」ではなく「いつ来てもおかしくない」災害と捉えるべきでしょう。
首都直下地震と南海トラフ地震はどちらの被害規模がより深刻と考えられていますか?
首都直下地震と南海トラフ地震はいずれも甚大な被害をもたらすと想定されていますが、その特徴と影響範囲は異なります。
想定される被害規模や影響について、以下に整理しました。
項目 | 首都直下地震 | 南海トラフ地震 |
想定規模 | M7クラス | M9クラス |
主な被害 | 突然の強烈な縦揺れ、火災、建物倒壊 | 巨大津波、広範囲の横揺れ、沿岸部壊滅的被害 |
被害地域 | 東京23区・首都圏中心 | 東海〜四国・九州まで広範囲 |
経済被害額(政府試算) | 約95兆円 | 約270兆円 |
社会的影響 | 首都機能の停止、交通・通信・経済活動への直撃 | 全国的な物流停滞、復旧に長期を要する |
規模そのものでは南海トラフ地震が上回りますが、首都直下地震は日本の政治・経済の中心を直撃するため、社会的な混乱や経済への影響がより直接的です。
首都直下地震で最も危ないエリア・県はどこですか?
首都直下地震の被害想定では、最も危険とされるのが震源地に近い東京都心部です。
特に東京23区のうち、千代田区・中央区・港区・新宿区・渋谷区などのビジネス中枢エリアは、高層ビルの密集によるガラス落下や帰宅困難者の大量発生が懸念されています。
また、下町エリアの墨田区・江東区・足立区など木造住宅が多い地域は、火災延焼による被害が大きいと想定されています。
県単位で見ると、震源に近い東京はもちろん、神奈川県・埼玉県・千葉県も強い揺れの影響を受ける可能性が高い地域です。
特に埼玉県南部や千葉県西部など首都圏に隣接するエリアは、住宅密集や老朽化したインフラの影響で被害が拡大するリスクがあります。
以上を踏まえると、「最も危ない」とされるのは東京都23区ですが、周辺県も含めた首都圏全体で広範囲に被害が及ぶことを前提に備えておくことが大切です。
自宅や職場の立地条件を確認し、火災・倒壊・交通遮断などのリスクを多角的に想定しておきましょう。
首都直下地震が来ても安全な県はどこですか?
首都直下地震は、東京を中心とした首都圏に大きな被害を及ぼすと想定されています。そのため、震源から離れた地域ほど相対的に安全度は高まるでしょう。
具体的には、東北地方(宮城・福島以北)や中部地方の日本海側(新潟・富山・石川など)、さらに西日本の内陸部(滋賀・奈良など)は、首都圏に比べると揺れや火災のリスクが低いと考えられています。
まとめ|首都直下地震に備えるならHANAREにご相談ください
首都直下地震は「30年以内に70%」という高い確率で発生が想定され、都心を中心に甚大な被害をもたらすといわれています。
突然の強烈な揺れ、火災、ライフラインの断絶、交通麻痺など、都市機能が一気に停止する可能性を考えると、今から備えを進めることが不可欠です。
具体的な備えとしては、避難所の確認や家具の転倒防止といった身近な対策から、自宅の耐震化やシェルター設置、備蓄の確保、家族の安否確認方法の取り決めまで幅広くあります。
なお、HANAREでは、耐震シェルターをはじめとした防災対策のご相談を承っております。専門知識を持つスタッフが、ご家庭や職場の状況に合わせた最適なプランをご提案可能です。「何から始めればいいかわからない」という方も、まずはお気軽にご相談ください。